ノルウェイの森

愛すること、生きることの意義を静かにかつ激しく、そして限りなく美しく描いた究極のラブストーリー

写真:降り積もった雪の上に寝転んでいるワタナベと、その胸に寄り添う直子。二人は静かに目を閉じている。

1987年に刊行された村上春樹の小説「ノルウェイの森」。自殺した親友の恋人だった直子と大学の同窓生・緑との間で揺れ動く主人公ワタナベの青春のもがきを描いた究極の恋愛物語に、多くの人々の心が動かされ、時代が動かされた。画期的な赤と緑の装丁も話題となり、当時はその本を持つこと自体が1つのステイタスにもなった。そんな20世紀を代表する小説は21世紀になった今も読み継がれており、その累計発行部数は1000万部を突破し、日本の国内小説累計発行部数歴代第1位の記録を更新し続けている。更には、その小説世界は日本だけでなく世界をも魅了しており、現在までに36言語に翻訳されて各国で熱狂的なファン(ハルキスト)を生み出している。村上春樹は現在「世界でもっとも有名な日本人作家」と言っても過言ではない。

写真:雪の中に立つ直子の憂いを含んだ横顔。長い黒髪に毛糸の帽子をかぶっている。

そして、出版から20年以上の時を経て「ノルウェイの森」が遂に奇跡の映画化を果たす!

監督は『青いパパイヤの香り』『夏至』などの作品で叙情性溢れる映像美で人間の機微を静かに、でも温かく描くことに定評のあったトラン・アン・ユン監督。1994年にパリで原作を読んで、「力強く繊細であり、激しさと優雅さが混沌としていて、官能的かつ詩情にあふれている」と、その世界観に魅せられたトラン監督は世界中のどんな監督よりも映画化を熱望した。そのトラン監督の熱意こそが、ずっと不可能と思われていた「ノルウェイの森」の映画化への扉への鍵となったのだった。そして、スタッフも撮影には候孝賢監督やウォン・カーウァイ監督の作品の他に日本でも『春の雪』や『空気人形』などを手掛けた世界からリスペクトされるアジアの巨匠、マーク・リー・ピンビン、音楽にはカリスマロックバンド・レディオヘッドのギタリスト、ジョニー・グリーンウッドなど、日本映画の枠を越えた国際色豊かな面々が揃った。さらに、主題歌は何とあのビートルズ!世界配給の邦画としては史上初の快挙だ。

写真:雪の中に立つワタナベの穏やかな横顔。髪も手編みのマフラーも、雪で白くなっている。

そして、キャストには主人公の「ワタナベ」に作品ごとに印象を変える演技派俳優・松山ケンイチ、ワタナベが恋に落ちる女性「直子」に圧倒的な演技力で国際映画祭の常連女優・菊地凛子、新たにワタナベの前に現れる女性「緑」に本作が映画デヴューとなる期待のミューズ・水原希子らを迎え、原作のイメージは受け継ぎながらも新しい「ノルウェイの森」を誕生させている。

本作には愛と性、生と死、男と女、動と静、強さと優しさ、刹那と永遠、ビートルズとドアーズなど様々な要素が溢れている。そのように様々な要素がそれこそ森のように茂っているために、多くの人の心を惹きつけ、またその人達の心の中に何かの種を残していくことだろう。人が人を愛することは美しく素晴らしいことだが、人が人と生きていくのは生半可なことではない。そこには脆さもあれば、醜さもある。そして、愛したその人を失ってしまうこともある。どのような強さも優しさも、その哀しみを癒すことは出来ないだろう。でも、それでも人はまた誰かを愛し生きていく。たとえ、それが世界の涯てに落ちることになっても。そして、そこからまた新たな強さと優しさを現出させていくのである。それこそが本作で紡ぎ出される、生きていく上での強さであり優しさの在り様なのである。どうかそんな世界の涯てでも存在し続ける強さと優しさのひとつの姿をこの映画で目の当たりにして欲しい。それはきっとあなたの心の中に永遠に続く美しい森を残してくれることだろう。

1987年に小説が刊行され、1994年にトラン監督がその小説に出会い、2004年に村上春樹とトランが出会い、2008年に映画化が決まり、2009年に撮影が始まり、2010年に映画が完成し公開される。

これは1つの事件であって、1つの確かな奇跡である。

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