ノルウェイの森

ヴェネチア国際映画祭

写真:左から松山ケンイチさん、トラン・アン・ユン監督、菊地凛子さん、水原希子さんがレッドカーペット上に並んでいる。

今年9月1日から11日まで開催された第67回ヴェネチア国際映画祭で、『ノルウェイの森』はクエンティン・タランティーノ監督が審査委員長を務めるコンペティション部門の24作品にノミネートされた。

カンヌ、ベルリンと並ぶ“世界3大映画祭”のひとつ、ヴェネチアは、トラン・アン・ユン監督にとって、監督2作目『シクロ』(95)が金獅子賞(最高賞)を獲得した記念すべき地。公式上映を前にしたプレスカンファレンスには、日本映画としては異例の150人を超えるジャーナリストが詰めかけ、世界的に熱狂的なファンを持つ村上春樹作品の映画化をめぐり、活発な質疑がおこなわれた。過去の出演作がアジア各国で高い人気を誇る松山ケンイチ、海外作品への出演で3大映画祭の常連ともいえる菊地凛子、初演技ながら鮮烈な存在感を残した水原希子ら、各キャストに対する質問も飛び交う。

写真:左から菊地凛子さん、水原希子さん、松山ケンイチさん。肩を並べ笑顔を見せる3名。

監督も出演陣も、ワールドプレミアとなる公式上映を、期待と不安の入り混じった気持ちで待ち構えていた。9月2日。午後9時30分スタートの公式上映は、メイン会場となるサーラ・グランデを約1100人の観衆で超満員にした。レッドカーペットで喝采を浴び、客席に姿を現したのは、トラン監督、松山、菊地、水原、そして音楽を担当したジョニー・グリーンウッドの面々。場内の明かりが落ちると、先ほどまでの歓声が嘘のようにやみ、スクリーンに「ノルウェイの森」(イタリア語タイトルは「Tokyo Blues」)のタイトルが映し出される。約133分の上映中、観客は飄然としたワタナベらの会話に笑いを漏らし、映像と音楽によって構築された美しいシーンの数々に圧倒され、登場人物たちが抱える喪失感の深さに息をのんだ。そして、鮮やかな幕切れと共にビートルズの「ノルウェーの森」が流れ出した瞬間、「ブラヴィー!(素晴らしい)」の声援と割れんばかりの拍手が、いっせいに監督、キャストらをあたたかく包んだ。約6分間のスタンディング・オベーションに応え、立ち上がり、観客の興奮を正面から受け止めた彼ら。作品は惜しくも受賞を逃したが、この時彼らが見せた表情には、作品への確かな手応えをつかんだ、満足気な未来への笑みが浮かんでいた。

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